inkcube.org代表のMemorandum

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女性登用と多様性

先日,テレビのチャンネルを切り替えているときに映った番組で,女性登用に関する討論を行っていた.たまたま見た場面では,(女性が今後さらに活躍していくためには)登用される数を増やすことも重要であり,そのためには実力が上の男性より,実力が下の女性を登用することの是非が議論されていた.

(番組の途中からなので,何に登用されるのかは聞いていないが,企業における[管理職]への登用に置き換えて聞いていた.)

管理職に登用される女性の数を増やすことには大賛成である.

実力が下の女性の方を優先するか否かに関しては,現実として直面する論点でもある.

私が会社に所属していた時,年に2回,社員の評価を行う会議が部門ごとに行われていた.また年に1回,昇進・昇格(試験の受験者)を推薦することが行われていた.そこでは(会社を辞める何年か前から)「実力が同じ場合には,女性を優先してください」という通達なのかお知らせなのかが,部門長より会議に参加する管理職に来ていた.この場合は実力が下ではなく,同じ場合であったが.会社が女性登用を重要な課題として捉えていたのは間違いない.

さて,私は管理職に登用される女性の数を増やすことには大賛成であるが,こういう議論,論点になることがおかしいと感じている.こういう論点をしなくても,女性の登用は増やせると考えるし,実際増えると考えている.

管理職に必要な資質は1つや2つではない(もちろん最低限満たさないといけない資質はあるかもしれない).また,様々な職種や働き方がある中で,必要なスキル,重要視されるスキルもそれぞれ異なるはずである.それなのに比較する「実力」って何のことだろうと思う.確かに昇進試験では決まったテーマに対する論文と10分足らずの面接であり,ここでの出来のみを「実力」と考えれば比較はできるだろう.

しかし,登用するポジションに必要な資質,重要視されるスキルをきちんと用意し,その人を丁寧に評価すれば,もっと多くの女性も登用されるはずである.いや,こういうことを行えばもはや男性・女性という考え方すら不要になるはずである.

ただしこれを行うには,評価する側,審査する側にもかなりの手間や苦労が生じる.しかしそれをやらなければ,いつまでたっても女性登用の問題は,この単純な論点でごまかされてしまう.

女性登用の話ではないが,まだ私が管理職になる前,職場のイベントで社外からの講師が「実力主義」にすべきと主張していた.私も同意したが,肝心なことの説明がなく,すぐさま質問をした.「実力主義はいいが,評価する側がきちんと実力を評価する能力を備えていないと,実力主義は成立しないのではないかと」.その時,この質問に対する明確な回答はなかったが,評価には手間をかけ,もっと丁寧に行うべきである.人があっての会社なのだから.

人事部は,何千項目にも及ぶコンピテンシーの辞書を作り,社員に毎年レベルを登録させていた.なのに社内での配属変更や人事評価にこのコンピテンシーが有効に使われた話は聞いたことがない.手間をかけるところが違うのではないかと思っていた.

それ以前に女性の社会進出や活躍には,子育て等の社会的な課題が大きいことはわかっているのだが.