inkcube.org代表のMemorandum

インクジェット,3D,その他テクノロジーについて.

2021-01-01から1年間の記事一覧

今だけ,金だけ,自分だけ

この言葉は今年の国会で,ある野党議員が政府与党に向けた批判の言葉である.今年最も気に入った言葉の1つであるが,この言葉は今の日本の産業,経済の衰退(言い過ぎか),伸び悩み(やや柔らかい言い方)の根本の原因の1つを指摘している言葉としても相応しい…

中国製ヘッドと冗長ノズル

先週,色材協会のコンファレンス(IT講座)で連続噴射型インクジェットの話をした.そのコンファレンスの他の講演にSuzhou Realfast Print Technolog Co. Ltd.から中国製のサーマルインクジェットヘッドの紹介があった.この会社は中国でPIJやTIJのヘッドを開…

インクとインキ,印刷技術

インクジェットではプリントするために吐出する液体を「インク」と呼ぶのが一般的であるが,時々「インキ」と表現するメディアや記事を見かける. インクとインキの違いは何か,おそらく英語圏で始まった技術由来か,ドイツ語圏で始まった技術由来ではないか…

ファクトチェック

学会の役割として,出版物,ネット等で学会がカバーする技術領域に関する記述に対する誤りをチェックし,場合によってはそれを正す役割,いわゆるファクトチェックとでもいうべき役割があっても良いと思う.日本画像学会のカバーする領域は画像技術であり,…

国際会議

10月はICAI,Print4Fabという2つの国際コンファレンス,4DFFという国内コンファレンスがあり,いずれもオンライン開催であったが運営委員,座長,モデレーター,講演と様々な形で加わった. 先週の4DFF2021は4年前に自分で立ち上げたコンファレンスであり,…

Things to DOメモ

9/7に書いた「時間管理能力」というほどのものではないと思うが,会社時代,特に会社の仕事以外のやるべきことを多く抱えていたころ,「Things to DO」メモを毎日作っていた. 長いスパンでやるべきことではなく,例えば誰かにメールで返事をするとか,会合…

メールの返信と時間管理能力

仕事や学会関係で,自分に講演や執筆,その他いろいろな依頼や問い合わせがメールで来ることが多いが,私が他の方へお願いや問い合わせのメールをすることも多い.依頼をしてお断りをされるのは残念だがその方の事情もあるわけだし,仕方ない.断りのメール…

Planned Happenstance Theory

Planned Happenstance Theory(計画された偶発性理論)はスタンフォード大学教授のジョン・D・クランボルツ博士が提唱したものである.その理論は要約すれば「人生の80%は偶然の出来事に左右される」「ただし自分にとってよい偶然を発生させる確率は自らの行…

トランザクティブメモリ

自分の知識を広げるため,これまで会ったことのない人に会って話を聞き,また本や文献等を読むだろう.しかしそれらの知識を全て自分のものとして吸収することは出来ない.つまり自分の頭の中に(自分の関心ごとだけだとしても)百科事典を作ることは(私のよう…

オフィス論争は終焉か?

衝撃的なニュースだった.HPがPageWide Printheadによるオフィスプリンタ市場から撤退するという知らせだった.このニュースには残るはエプソンだけ,と書かれていたことからいつの間にかキヤノンも撤退していたことになる. SOHOやSMB向けのシリアルプリン…

残インク量と消費者の不満

インクジェットに関する一般消費者の不満,あるいはネットへの投稿における話題を見ると,インクカートリッジ(タンク)交換時のインク残量,すなわちインクカートリッジを交換する(交換せよとのアラームが出る)際,実際にどれくらいのインクが残っているのか…

新規市場と参入戦略

2週間後に開催する日本画像学会技術講習会のインクジェット基礎講座の申込者に,事前質問を記入してもらっている. その中に,「今後インクジェットで成長できる市場,新規市場は何ですか?」という質問がある.それがわかっていれば苦労しない,というのがイ…

ドメイン名詐欺?

3年前にinkcube.orgのWEBサイトを公開し,連絡先としてメールアドレスを公開した.メールアドレスを公開すれば様々な迷惑メールがくることは覚悟していた.念のためメールアドレスの一部を画像にしていたが,あまり効果がないようだ. 様々なセールスメール…

オーネゾルゲ数

今週,日本画像学会のICJ2021 Springを聴講した. 例年このコンファレンスは秋に関西で行われるもので,今年は秋に別の国際会議を開催するため,この時期にオンラインで開催した. これまでこのコンファレンスにはインクジェットに関する発表は2~3件程度し…

成功事例とエピソード

NHKのプロジェクトXの再放送を放映していた.VHS方式の家庭用VTR開発の回であった.プロジェクトXはいろいろ演出もあるのだろうが,技術者としていつもこの番組には素直に感動させられている.ただし技術の成功事例やエピソードは尊重し,登場する技術者には…

誰のための報告?

どんな組織でも報告,あるいは提案をする機会は多い. 特に記憶に残る私の体験で,研究成果である新しい技術で新しい事業を起こすための事業プランやそのための組織,人材獲得を研究所を束ねる運営体に提案した時のことである. 同じ提案内容を,様々な機会…

責任をとる

今も昔も「責任を取る」とか「すべて私に責任がある」とか言った人が,なるほど責任をとったね,と納得する場面やケースをほとんど見たことがない. もちろん「責任を取る」とはどういうことか,ケースによっても異なるし,人によっても意見が異なるだろう.…

削除した「ものづくり補助金」

学会誌8月号の3Dプリンタ特集向けの解説記事の締め切り前に,全文を読み返してみた. その結果,最後のまとめに記載した以下の文章を悩んだあげく,削除することにした. まずは削除した文章を以下に紹介する. ----------------- 中小企業向けの‘ものづくり…

何故日本で3Dプリンタが活用されないのか

日本画像学会誌の8月号で3Dプリンターの特集が組まれる.この特集の企画に参画したが,昨年12月の関西シンポジウムで講演した内容をい中心に,自らも解説記事を書くことになった. ここではこの解説記事の一部であり,「おわりに」記述した表記タイトルに関…

インクジェットトリビア(3):サーマルインクジェットという単語

キヤノンが「バブルジェット」と呼ぶ方式は,学会等では一般的に「サーマルインクジェット」という名称が使われる.同じ方式で使われる「バブルジェット」はキヤノンが保有する商標である. インクジェットにある程度精通した人なら,サーマルインクジェット…

仕様公開とビジネス

従来のメッシュベースではないボクセルベースの全く新しい3DデータフォーマットであるFAVを慶應義塾大学と共同研究し,仕様を策定して2016年に公開した(ver.1.0). FAVに様々な3D情報を保持させることで,煩雑な処理を経ることなく3Dプリンタの能力を発揮で…

インクジェットトリビア(2):請求項の多い特許

インクジェット関連で一番請求項が多い特許は? それはキヤノンから出願され登録された第3188524号である.サーマルインクジェットヘッド(発熱体の組成)に関する特許で,なんと請求項が272ある.(登録時も272の請求項のまま) 1992年に出願され,1997年に審査…

労働生産性

先日「脱ハンコ」推進に関する講演を聴講した.電子での本人認証(担保)手段のトレンドや,その中で最も信頼性が高いPKI(Public Key Infrastructure)の仕組みをよく知ることができたので,講演自体は有意義だった. 脱ハンコや可能で効率化につながるペーパー…

インクジェットトリビア(1):ink jetという単語

インクジェットに関するトリビア(小ネタ)を時々紹介します. (ネットで探せば見つけることができるネタもありますが) まず最初は'ink jet'という言葉. 'ink jet'という言葉が一番最初に使われたのはいつでしょうか? 2008年に学会誌の解説記事を書いている中…

目利き

「目利き」という言葉,あるいは存在は若い人にとってはなんか古臭い,ひと昔前のアナログな存在といった印象を持つかもしれない. しかし価値が多様化し,スピードが求められる今の研究・開発にこそこの「目利き」の重要性が増してくると考える. 目利きの…

医薬品と特許

今日は少し難しく,意見の分かれる話題を取り上げてみようと思う. 医薬品における特許の在り方である. 医療行為(手術や治療行為)については,見直しの要請があるものの現在でも特許の対象としない運用が一般的には行われている. 医薬品に関しては当然特許…

Siphon Recorder

文献(論文,記事)や特許を読むことは,技術の幅を広げ,深めるために当然必要な行為である. ホームページに公開しているインクジェット関連の保有文献数は3000あまりだが,掲載してないものを含めれば4000近い文献を保有している.すべて読んでいるわけでは…

AMC名古屋

エレファンテックのAMC(Additive Manufacturing Center)名古屋が始動し,縁あって本日11:00から行われたオンラインの記者会見に参加させていただきました. インクジェット(+Cuメッキによるピュアアディテブ法)によるFPCの本格量産に乗り出したということは…

昔話(2)

サラリーマンなら誰もが感じることかもしれないが,会社時代,私は上司とそりが合ったことがないし,大きなケンカもした.それが出世できなかった理由の1つだと思うのは,これもよくあるサラリーマンの勘違いなのかもしれないが... 昨日書いた商品とは異…

昔話(1)

先日記載した技術者層の薄さに起因して苦労した話を今日1つ,明日もう1つ. 他の会社ではどうかわからないが,ヘッド屋とインク屋はコミュニケーションがうまく行っていないことが多いのではないでしょうか.偏見もあるかもしれないが,どちらかと言えばイン…