inkcube.org代表のMemorandum

インクジェット,3D,その他テクノロジーについて.

論理構成力

前々回触れた新規授業科目企画書が完成し提出した.採用され,大学院生向けに15週の授業ができることを願っている.

今回もこの企画書に記載した評価の観点と基準について書こうと思う.授業のテーマは「情報出力装置概論~可視化・具象化される情報価値の最大化~」であり,情報出力装置,および関連する技術や仕組みに関する知識を学習し,さらに受講生それぞれが,情報価値の最大化をするための組織の在り方,標準化や特許戦略交えた技術戦略,さらには共有価値まで含めたサプライチェーンやビジネスモデルがどうあるべきかの仮説を立案することを目指している.

もうひとつの授業の狙いとして,議論や仮説構築を通じて考え方における受講生の論理構成力を磨くことも目指している.これまで多くの研究者・技術者との議論や論文査読において,主張内容はともかく,その主張に至る考えが論理的に展開できていない場面に遭遇することが多った.そこで指導方針と評価基準に示したのは,あくまでも1例であるが,

1. あなたの主張は何か,あなたはどのようにしたいのか[結論]?

2. あなたの主張のもとになる考え方,何故あなたはそのように主張するのか?

3. あなたの考えを支える客観的根拠やデータは何か,あるいは授業のどの点を根拠にしているのか?

私は所属していた会社内のみならず,さまざまな利害が対立する(メンバーによる)外部組織で,リーダーとして前進するための意見集約,それに基づいた実践を数多く行ってきた.またパネルディスカッションや公開討論会ファシリテーターも数多く務めてきた.会議での合意形成を進める上で,またディスカッションを有意義に進めるためには,上記3つの段階のどこで参加者が対立しているのか,あるいは合意できているのかを把握して対応することがいかに重要であり,効果的か身を持って体験してきた.

非常にわかりやすい例ではあるが,ある会議の出席者全員が「若手エンジニア向けの勉強会を開催しましょう」と意見が一致したとしても(1が一致),何故勉強会を開く必要があるのかという背景,考え方はまるで異なるかもしれない(2が不一致).この場合,勉強会の企画内容や対象者も含め,同じ名前の「勉強会」でも全く異なる企画を主張しているかもしれない.逆に「勉強会」だ,いや「飲み会」だと主張する企画内容が異なっても(1が不一致),若手技術者が他の領域の技術を知る機会が少ない,という理由が同じなら(2が一致),企画内容をいろいろ工夫することで両者の合意点を見つけることができるかもしれない.

これはあくまでも非常にわかりやすい一例であり,また実際の議論では1,2,3が混じった意見が多く,意見を言う場合でも(私も含め)毎度このようにきちんと構成を考えて話しているわけではない.

しかし,こういった論理構成は,主張の妥当性を高めるためにも非常に重要だと思う.課題とした提出レポートやプレゼンテーションでは,内容だけでなくこの論理構成も指導するとともに,評価の対象にしようと思う.