inkcube.org代表のMemorandum

インクジェット,3D,その他テクノロジーについて.

何故日本で3Dプリンタが活用されないのか

日本画像学会誌の8月号で3Dプリンターの特集が組まれる.この特集の企画に参画したが,昨年12月の関西シンポジウムで講演した内容をい中心に,自らも解説記事を書くことになった.

ここではこの解説記事の一部であり,「おわりに」記述した表記タイトルに関する文章を以下に記載する.

これまで3Dプリンターに関する講演を行うと「何故,日本は海外に比べ3Dプリンターの活用が遅れているのか?」と聞かれることがある.確かに各種調査による日本の3Dプリンターの市場規模は他の市場,例えばインクジェットプリンター市場の日本と世界の差(割合)より圧倒的に大きな差があるし,Fig.1に示した「ものづくり」における活用Phaseでも欧米や中国の方が先行しているのは事実である.この問いに対する答えは1つではない.欧米に比べDIY文化が根付いていないとか,少量でも採算性が成立する宇宙・航空機などのビジネスが日本ではあまり育っていないというのもあるだろう.もうひとつ強く感じるのは従来製法との比較ではなく,3Dプリンターの特徴を訴求できるはずのビジネスへの進出が難しく,それは従来のチェーン型のサプライチェーンにどっぷりはまってしまい,そこに留まっている企業が多いことも理由の1つではないだろうか.ものづくりにおいて精度,コストはもちろん重要であるが,3章でも例示したようにそれを取り払える市場,アプリケーションの開拓に,サプライチェーンの上位から精度,コストを提示(指示)されて仕事をしているだけではなかなか乗り出せないだろう.チェーン型サプライチェーンにおける’ケイレツ’の陰の部分が現れているのかもしれない.この意味でも新しいプロジェクト型サプライチェーンを試行する価値があると思われる.