inkcube.org代表のMemorandum

インクジェット,3D,その他テクノロジーについて.

国際会議

10月はICAI,Print4Fabという2つの国際コンファレンス,4DFFという国内コンファレンスがあり,いずれもオンライン開催であったが運営委員,座長,モデレーター,講演と様々な形で加わった.

先週の4DFF2021は4年前に自分で立ち上げたコンファレンスであり,発表者のほとんどが学生ということもあって活気がありとても充実した2日間であった.余談だがショーケース(ポスターセッションのようなもの)は本来,会場で研究成果を展示して議論するセッションであり,なるべくオンラインでその目的が果たせるようoViceという新しいコミュニケーションツールを採用し,発表者には3分の紹介動画の作成を義務付けている.動画作成は昨年のオンライン開催から取り入れたのだが,当初は発表者への動画作成の負担を心配していたが,今年もその出来栄え(Quality)の高さには驚かされた.このコンファレンスの発表者は学生が中心と書いたが,若い彼ら,彼女らに動画作成の負担など心配する必要がないことも良くわかった.

さて,前半に開催された2つの国際会議,特に日本側が主催した方はそれまで持っていた国際会議への疑問を再認識することになった.今年の8月までこの会議を主催した学会の国際交流委員長を務めており国際化を推進する立場であったので,国内の学会でも国際的な発表の場を設ける意義が大きいことは良く理解しているし,そこに疑問を挟むつもりはない.ただ,国際会議といってもほとんどが日本からの発表,日本からの参加者という状況は,公開,議論により技術の進展に寄与するというコンファレンスの目的を考えると,国際会議開催の意義を超えた異議が発生する.英語というハードルによる参加者の減少,議論の低調という現実を見れば日本語で活発な議論をした方が良い.繰り返すが国際会議を否定するのではなく,また国際会議や英語に慣れるチャンスといった前向きな意見もあるだろうが,それは「目的」ではなく「手段」としての国際会議を捉えているだけであり,ほとんどが国内からの発表・参加が予想されるイベントを無理に国際化する必要はないのではないだろうか.今回も他学会との共催であり,他の学会には海外からの発表も多く会議全体として国際化を選択したことは間違いではない.しかし先週の日本語で活発な議論を行ったコンファレンスに比べ,ほとんどが座長からの質問しかないようなコンファレンスに少し虚しさを感じた10月前半であった.

これまで海外の国際会議に何度も参加し,ほんとうの意味での国際会議の良さを,身を持ってわかっているからこそ,それができない会議ならコンファレンス本来の目的を重視した方が良いと思うのである.