inkcube.org代表のMemorandum

インクジェット,3D,その他テクノロジーについて.

デジカメとiPhone

インクジェット部会委員の方に,年末年始に売れたインクジェットプリンタの上位1,2位は実売価格が6,000~7,500円のいわゆるローエンド機種だと教えていただいた(BNC).

私がことあることに話をしているインクジェット技術進化論から言えば,これも当然の結果かもしれない.

進化論では2005年頃にコンシューマ向けインクジェットプリンタの基本性能はほぼマチュアになり,一般ユーザーの買い替え意欲も減少し,販売台数も減少していることを紹介している.マチュアになった(最高)性能(技術)は徐々にローエンド機種にも展開されるだろうし,依然フラグシップ機との差はあったとしても,その差は一般ユーザーにとってあまり認識できなければ,当然安い機種を求めるだろう.また,その差が認識できたとしてもユーザーの用途にとって意味がなければ(プリンタの用途の変化を考えれば),そこからも理由が見つかると思う.

多くの一般消費者の写真撮影がデジカメからスマホ中心になり,撮影した写真をSNSにあげたとしてもプリントする人はかなり減っている.プリントするとしてもローエンド機種でそれなりの画質(といっても,大方の一般ユーザーにとっては満足レベル)であれば,フラグシップ機をはじめとする上位機種を買う必要性を感じないだろう.ましてや文書出力や年賀状出力中心なら他の仕様や価格を重視するかもしれない.

インクジェットに関わって35年以上の私でもちょうど1年前に書いた記事のように,今のたいていのインクジェットプリンタに対しては写真画質には問題意識を持っておらず,他の仕様を重視して初めてB社のプリンタを購入した.普通のユーザーより多くのデジカメの写真をプリントし,画質を気にする方だと思うが,大きくしてもハガキサイズ程度だし,部屋に飾り,人にあげる分にはこの機種の画質に不満はない.

さて,関連するようで関連がないかもしれない話題をもうひとつ.旅行,特に海外旅行や出張に行くと,当然現地の写真をデジカメで撮りまくっていた.コンデジでもわりと価格の高い機種を買い替えて使っていたのだが,自分の腕や経験のなさは棚にあげて,もっと良い写真がとれるかもしれないという期待のもと,2019年末にミラーレスのデジカメを購入した.その直後新型コロナの発生で,海外はもちろん国内も遠くへは出かけられず,ミラーレスの活躍の場もないまま今に至っている.そんな中,iPhoneを6S Plusから13 Pro Maxに買い替え,もし新型コロナが終息して旅行に行けるようになっても,荷物になるデジカメは持っていかず,iPhoneだけでも良いかもしれないと思い始めた.

デジカメと13 Pro Maxを比較すれば画素数f値はそれほど見劣りしない.もちろんレンズ数や開口の大きさ,センサのサイズ,収差などデジカメの方が優れているのは明確だが,プリントしても最大ハガキサイズ,著名なコンテストに応募するわけでもなく自分で,あるいは身内で楽しむ程度の用途には十分の性能で,荷物にならないiPhoneを持っていこうと考えるのも当然かもしれない.現に観光地の状況を見ればわかるように,いつのまにか写真はスマホで撮る人が圧倒的に多くなったことがわかる.デジカメが高くて買えないのではなく,彼ら/彼女らの用途にはスマホが最適なのである.

ただ,最初に書いたプリンタの話を大きく違うのは購入したiPhone 13 Pro Maxは私の持っているミラーレス(レンズ含む)より価格が高いということである.