inkcube.org代表のMemorandum

インクジェット,3D,その他テクノロジーについて.

インクジェット

デジタルプリンティング

インクジェットや電子写真によるプリンティングを「デジタルプリンティング」と総称することがある.いつからこのように呼び始めたかはわからないが,例えば原稿からの反射光で直接感光体に潜像を形成していたコピー機をアナログ複写機とし,これに対して潜…

ちびまる子ちゃんとリフィルモデル

ちびまる子ちゃんの声のTARAKOさんがお亡くなりになった. 実はこの2週間くらい,ちびまる子が表紙になっている昔のノートを取り出し,中身と格闘している. このノートに書きつけていたのは,インクのリフィルと,ノズルでのメニスカス振動をNavier-Stokes…

大学からの帰り道

先日,以前から存じてあげておりコロナ前には良く学会等でお会いしていたある大学の先生に呼ばれ,研究室を訪問してきた.先生の研究テーマに関し困っていることがあり助言が欲しいとのことだった.この先生は流体力学,音響学の専門家であり,いくら私がイ…

Window

先日コンシューマー向け商品の記事や情報を発信するネットメディアからインタビューを受けた.インタビューの目的からは少し脱線したが,インクジェットプリンタに搭載されている技術が,非常に緻密で繊細で高度な技術の塊であり(インクジェットプリンタに限…

煽るタイトル

『動作不能にさせる「時限装置」が仕込まれたあのデバイス』 これはあるIT系メディアの8月19日のWEB版に掲載された記事のタイトルである. これだけ見ると,いったいどんな時限装置なのか,どこのメーカーの仕業なのかと疑心の気持ちで記事を読み始めるだろ…

高粘度液体噴射ヘッド

Quanticaから高粘度吐出できるオンデマンド型ヘッドが2021年に学会発表され,3Dプリンタへ実装されたことが先月,記事になっていた.ピエソでピストンを押す新しい方式で250mPa・sまでの粘度に対応できる. ヘッドに対する要求として,高粘度液体の吐出があ…

最初の特許(?)

現在,インクジェットで当たり前のように使われている技術について,最初の特許出願を調べてみたので,いくつか紹介します. もしかしたらここに紹介する特許より早い出願があるかもしれません.ご存じの場合,教えていただけると助かります. ●スターホイー…

デジカメとiPhone

インクジェット部会委員の方に,年末年始に売れたインクジェットプリンタの上位1,2位は実売価格が6,000~7,500円のいわゆるローエンド機種だと教えていただいた(BNC). 私がことあることに話をしているインクジェット技術進化論から言えば,これも当然の結果…

中国製ヘッドと冗長ノズル

先週,色材協会のコンファレンス(IT講座)で連続噴射型インクジェットの話をした.そのコンファレンスの他の講演にSuzhou Realfast Print Technolog Co. Ltd.から中国製のサーマルインクジェットヘッドの紹介があった.この会社は中国でPIJやTIJのヘッドを開…

インクとインキ,印刷技術

インクジェットではプリントするために吐出する液体を「インク」と呼ぶのが一般的であるが,時々「インキ」と表現するメディアや記事を見かける. インクとインキの違いは何か,おそらく英語圏で始まった技術由来か,ドイツ語圏で始まった技術由来ではないか…

ファクトチェック

学会の役割として,出版物,ネット等で学会がカバーする技術領域に関する記述に対する誤りをチェックし,場合によってはそれを正す役割,いわゆるファクトチェックとでもいうべき役割があっても良いと思う.日本画像学会のカバーする領域は画像技術であり,…

オフィス論争は終焉か?

衝撃的なニュースだった.HPがPageWide Printheadによるオフィスプリンタ市場から撤退するという知らせだった.このニュースには残るはエプソンだけ,と書かれていたことからいつの間にかキヤノンも撤退していたことになる. SOHOやSMB向けのシリアルプリン…

残インク量と消費者の不満

インクジェットに関する一般消費者の不満,あるいはネットへの投稿における話題を見ると,インクカートリッジ(タンク)交換時のインク残量,すなわちインクカートリッジを交換する(交換せよとのアラームが出る)際,実際にどれくらいのインクが残っているのか…

オーネゾルゲ数

今週,日本画像学会のICJ2021 Springを聴講した. 例年このコンファレンスは秋に関西で行われるもので,今年は秋に別の国際会議を開催するため,この時期にオンラインで開催した. これまでこのコンファレンスにはインクジェットに関する発表は2~3件程度し…

インクジェットトリビア(3):サーマルインクジェットという単語

キヤノンが「バブルジェット」と呼ぶ方式は,学会等では一般的に「サーマルインクジェット」という名称が使われる.同じ方式で使われる「バブルジェット」はキヤノンが保有する商標である. インクジェットにある程度精通した人なら,サーマルインクジェット…

インクジェットトリビア(2):請求項の多い特許

インクジェット関連で一番請求項が多い特許は? それはキヤノンから出願され登録された第3188524号である.サーマルインクジェットヘッド(発熱体の組成)に関する特許で,なんと請求項が272ある.(登録時も272の請求項のまま) 1992年に出願され,1997年に審査…

インクジェットトリビア(1):ink jetという単語

インクジェットに関するトリビア(小ネタ)を時々紹介します. (ネットで探せば見つけることができるネタもありますが) まず最初は'ink jet'という言葉. 'ink jet'という言葉が一番最初に使われたのはいつでしょうか? 2008年に学会誌の解説記事を書いている中…

Siphon Recorder

文献(論文,記事)や特許を読むことは,技術の幅を広げ,深めるために当然必要な行為である. ホームページに公開しているインクジェット関連の保有文献数は3000あまりだが,掲載してないものを含めれば4000近い文献を保有している.すべて読んでいるわけでは…

AMC名古屋

エレファンテックのAMC(Additive Manufacturing Center)名古屋が始動し,縁あって本日11:00から行われたオンラインの記者会見に参加させていただきました. インクジェット(+Cuメッキによるピュアアディテブ法)によるFPCの本格量産に乗り出したということは…

昔話(2)

サラリーマンなら誰もが感じることかもしれないが,会社時代,私は上司とそりが合ったことがないし,大きなケンカもした.それが出世できなかった理由の1つだと思うのは,これもよくあるサラリーマンの勘違いなのかもしれないが... 昨日書いた商品とは異…

昔話(1)

先日記載した技術者層の薄さに起因して苦労した話を今日1つ,明日もう1つ. 他の会社ではどうかわからないが,ヘッド屋とインク屋はコミュニケーションがうまく行っていないことが多いのではないでしょうか.偏見もあるかもしれないが,どちらかと言えばイン…

トラブルフォローとインクジェット概論

インクジェットの基礎講座(概論)の動画講座(LMS)を始めました.これまで会場で受講者を目の前に話していた内容とほぼ同じものです.参加者の顔や反応を見ながら説明を追加したり,話を脱線させる方が参加者も理解が進むと思うので,新型コロナ感染症が終息す…

80kHz

京セラが新しい循環式の1200npiプリントヘッドKJ4B-EXを発表した. 駆動周波数は80kHzであり,これまでより25%向上したと記載されている. 20年くらい前までは,PIJもTIJも新しいヘッドが発表される際には駆動周波数の表記が必ずあり,トレンドを追いやすか…

プリンタ選び

昨日記載したプリンタエラーのその後と最近のコンシューマ用インクジェットプリンタに一言. (会社では競合評価・・・という名目で様々なプリンタを購入してきましたが,自宅用のプリンタを買うのは7年ぶり) 結局エラーは解決できず(廃インクタンクフルのフ…

インクジェット開発センター

少し,いやかなり反応のタイミングとしては遅いと思いますが,山形大学のインクジェット開発センターについて. 開発センターの設立趣旨に記載されている,『ノウハウに依らないインクジェットの理論化,体系化により効率的な開発環境を実現する』には全く共…

方言

インクジェットの用語には多くの”方言”がある.”方言”とは”標準語”が存在することを前提にしているなら,標準語がない様々な言い方も各社にはある. 例えば,ノズルからインク滴を吐出しない状態でしばらく放置した後,次にそのノズルから吐出される液滴の飛…

インクジェット技術のポータルサイト

今年最初の社外でのセミナー講師.テーマはインクジェットと3Dプリンタ概論でした. 2003年に初めて社外セミナーの講師を始めて今年で16年目,明らかにこの数年参加される方の所属に変化が見られます. 最初の頃は参加されるのは,ほとんどインクジェットプ…

インクジェットの市場拡大と課題

金曜日に所属する学会の委員会総会があり,今年度のインクジェット技術部会の活動を報告しました.例年,大きな活動の1つである技術研究会,この10年はインクジェット技術を適用した市場の広がり,応用の広がりをテーマーにした研究会を多く開催してきました…