inkcube.org代表のMemorandum

インクジェット,3D,その他テクノロジーについて.

ドローンとFAV

2016年に提案し,2019年にJISに登録したボクセルベースの3DデータフォーマットFAV.このFAVとドローンといったいどのような関係があるのだろうか.

昨年から経済産業省主体で「3次元空間情報基盤アーキテクチャ検討会」が始まっており,ここではドローンを始め,将来の自立行動型ロボットのための空間地図を作ろうという検討が行われている.国土交通省でも国土地図情報を様々な新しい動きにつなげようとする活動が行われているが(PLATEAU),この経済産業省の検討会では空間地図をボクセルベースにすることが取り上げられており,先日,経済産業省やデジタルアーキテクチャ・デザインセンタの方から,FAVや空間表現についてのヒアリングを受けた.FAVそのものがこの空間地図の仕様に採用されるわけではないが,FAVで実現されているいくつかの考えが取り入れられれば非常に面白い展開になるのではないかと期待している.

当初目指した3Dプリンタ用のフォーマットとしてはまだまだ先の長い話になりそうであるが,このような新しい展開につながることもFAVの提案者のひとりとして嬉しく思う.

ところで,ニュースで取り上げられている最近のドローンによるいくつかの試みについて,話題性についてもだが,試み自体の真価について疑問に思うものがある.

ドローンによる(商品・物品)配送の実験で,例えば調理したラーメンを公園で遊んでいる人に届け,おいしそうに食べるニュースがあった.将来,こういうシーンが当たりまえになる日がくるのかもしれないが,この実験自体,「話題性」以外に何の意味があるのだろうか(これだけ世界中でドローンが活躍している今では話題性も???だが).従来では運べない超重量や,運搬物の品質を損なわない新しい工夫、あるいは運搬中に調理したりあっというまに到着するような技術開発や課題を解決したものでもない.また多く飛び交うドローンの中で配送コースを最適化したり,飛ばす場所がなく狭小キッチンから直接ドローンが離陸し狭いマンションのベランダに着陸するようなドローンの運行・環境に関する実験でもない.これはあくまでも一例であるが,ドローンという今のはやりに乗った話題性だけのものをメディアだけでなく,自治体や一部技術者までもが参加したお祭り騒ぎである.

ドローンが活用されるそんな将来を目指すなら,もっと本質的に取り組まなければならないことはたくさんある.そこをおろそかにすると,どこかの国で実用化された時には,技術も運行システムも日本は世界からとんでもなく差をつけられているだろう(今も既に離されているが).

人を載せたドローンとの違いがわからない「空飛ぶ自動車」の開発競争にも言いたいことがあるので,これは別途書きたい.