inkcube.org代表のMemorandum

インクジェット,3D,その他テクノロジーについて.

煽るタイトル

『動作不能にさせる「時限装置」が仕込まれたあのデバイス

これはあるIT系メディアの8月19日のWEB版に掲載された記事のタイトルである.

これだけ見ると,いったいどんな時限装置なのか,どこのメーカーの仕業なのかと疑心の気持ちで記事を読み始めるだろう.私もメルマガで配信されたこのタイトルに引っ掛かり,本文を読んだ.

なんのことはない,インクジェットプリンタの廃インクタンクがフルになった(なる)警告と,動作ストップに関する内容である.しかも海外で報道された記事の引用と,編集部の(悪意を持った)感想であった.

たしかに以前,ここでも書いたインクカートリッジの残インク量検知と同様に,廃インクタンクフルの予測には誤差があり,消費者に戸惑いを与えていることは事実であり,背景や狙いを考えると仕方がないが,メーカーも消費者に丁寧な説明をすべきと述べた.

悪意を持ったと感じたのは,(引用記事はSE社のプリンタに関してであったが)同様の問題は他のメーカーでも起こっているのに,SE社だけの問題のように書いていること.また,記事の最後の編集部コメント(編集部の上司と部下の会話形式をとっているが)で,上司がメーカーには悪意はないとたしなめている(明確に否定はしていない)にも関わらず,最後には部下もメーカー側の悪意は否定したものの,「儲けるために仕方ないやり方」ではないか,として終わっている.

ちょうどタイミング悪く,医療機器でほんとうに故障するタイマーをしかけて修理費を稼いでいたという報道があり,メーカー側の姿勢を疑われても仕方ないことも起きてはいる.

だからと言って,昔から取り上げられているこの話題を,しかも1社のみを取り上げ悪意(読者の関心を引くという意味で)を持って書いているのは,技術系のメディアの編集部としては,不勉強だと言わざるを得ない.

私が所属する学会で,報道内容のファクトチェックを行い,明らかに間違いなら指摘する,という方針が決まった.しかしこういう記事は(もとは海外の記事を紹介しただけであり)それに基づく感想なので,抗議の仕様がない.しかし読者がいだくメーカーへの不信感は,誤情報と同等か,それ以上のものがある.困った問題である.