inkcube.org代表のMemorandum

インクジェット,3D,その他テクノロジーについて.

Window

先日コンシューマー向け商品の記事や情報を発信するネットメディアからインタビューを受けた.インタビューの目的からは少し脱線したが,インクジェットプリンタに搭載されている技術が,非常に緻密で繊細で高度な技術の塊であり(インクジェットプリンタに限った話ではないが),これが商品の提供側(開発メーカー)と消費者(ユーザー)との間の意識や問題の把握レベルについてギャップを生み出しているという持論を紹介した.

例えばサーマルインクジェットで言えば,太陽表面で起きている核融合に匹敵するエネルギー密度があの微小なヒーターで生まれていることや,十数μmのノズルから吐出中の乾燥と紙上の乾燥のぎりぎりのせめぎあいでインク組成やメンテナンスが決まっていることなど.

幸いに(許容コスト範囲で)技術が提供できる性能と,ユーザーが(得られる価値として)許容できる性能に,わずかに共通するWindowがあるので商品化ができているのである.もちろんユーザー側はその事情を知ることもできないし,知る必要もないと思う.そこでユーザーは正直な意見,感想として例えば「メーカー同士でのインク互換性は何故できないのか」とか「メンテナンスがうるさい」,「インクが残っているのに交換警告が出た」といった苦情が出てくるのである(2021年7月21日のメモにも記載した).メーカー側も苦情に対して言いたい正当な理由はあり,その実情をユーザーに丁寧に説明すべきではあるが,決して押し付けてはいけない.この日のオチとしては,だから間に立つメディアが商品を構成する技術も理解した上で記事を書いて欲しいという注文になったのだが.

 

今日の本題はここから.上の文章と共通するのはWindowという言葉だけかもしれないが.会社に在籍中も会社の業務でだけでなく学会,研究者・技術者としての使命としてのinkcube.org・大学の研究者としての活動,もちろん家庭人としての時間や暮らし.多くの活動を並行して進め両立させていた.退職後も趣味に生きる老後や孫の世話に時間を費やす生活を夢見ていたわけではないが,退職前からの内容はさらに濃く,忙しくなり,新たに契約を交わした仕事,大学院での授業や研究まで加わり,全て自分で望んでやっていることばかりだが,すでに消えかかっていた両立できるWindowがほぼ無くなってきた.無くなるだけならぎりぎりやってもいけるところ,お互いの領域を妨害し始めようとしている.これまでそれぞれが全く別物ではなく,重なっても良い関係や反応が起きていたのだが,今はそれ以上にマイナスの面が生じようとしている.支える地盤(体力)も弱っているし.

これまでもいくつかは活動の一部を減らし,誰かに任せその状況を回避してきたが,いよいよどれか活動そのものを大きく除外しないと,全てが動かなくなってしまう状況になってきた.

それで何を外すのか,外さないといけないのか,それともまだぎりぎりで乗り切る,例えば2次元的なWindowではなく,3次元的なSpaceとして確保できるか.年内に結論を出さなければいけない.

この話にはオチはない.もし年末に続報が書けたらWindow/Spaceが確保できたということである.