inkcube.org代表のMemorandum

インクジェット,3D,その他テクノロジーについて.

新規授業と評価

大学院修士課程の学生向けに15週の授業を受け持つ可能性があり,この新規授業科目企画書を作成している.授業のテーマは,

「情報出力装置概論~可視化・具象化される情報価値の最大化~」

とし,2D/3Dプリンターの技術だけではなく技術進化論,組織論,ロードマップ,イノベーション,特許戦略,標準化戦略,ビジネスモデル,サプライチェーンや共有価値を交えながら,いかにして市場での情報出力機器が創出する価値を最大化するかについて講義し,学生と考えようと思う.

詳細な授業内容については実際に授業が行えるようになってから紹介したいし,将来,大学外でも若い技術者向けに実施したいとも考える.

 

さて,企画書にはどのように受講生(学生)を評価するのか,観点や基準を明確に記載する必要がありまとめている.このとき,会社内での個人実績評価でいくたびも問題になった,「相対評価」「絶対評価」のことを思い出した.

 

会社に入社し長い間,相対評価が当たり前のように行われていたし,社員も疑問を持つ人もいたが「相対評価」であることが明確になっていた.私がいた会社ではいつからだろう,会社を辞める15年前くらいだったか,会社(人事部)の人事制度の変更内容の目玉の1つに「絶対評価」「加点評価」への変更が掲げられた.絶対評価については2022年5月のコメントにも書いたように,評価者の力量が重要であり,会社も実績評価のフォーマットを変更するだけでなく,管理職に対し部下との面談における接し方などのトレーニングを行う研修を課し,私のもいやいやながら受講した.

しかしふたをあけてみれば現実は以前より厳密な「相対評価」であり,つまり評価会議においても評価レベルへの割り当て割合(%)は厳密に決まっていたし,その割合は以前より厳しく(上位レベルの割合が少ない)なっていたように感じた.唯一変わっていたのは,最上位のレベルと最下位のレベルが足されたことくらいだろう.

しかし新しい人事制度が始まり一般社員も徐々にそのことに気づき始めても,会社(人事部)は「絶対評価」という看板を外すことは決してなかった.

 

会社が事実上「相対評価」をとらざるを得なかった事情は何か? 評価者の力量のばらつきとそれによる評価者への不信感もあったのだろう.時代の流れでそう言わざるを得なかった事情もあるのかみしれない.しかし私も含め多くの人が感じ,必ず上がるのは人件費の抑制,あるいは狙い(毎年目標)の範囲に納めるためではないかということである.これに対して会社は数字を示して反論したことがあるが,全く納得がいくデータや説明ではなかったように記憶している.(人事部がこれをほんとうに「絶対評価」と信じて制度設計をし,導入したとしたら,それはそれで恐ろしい・・・)

 

結局,多くの人が持つこの疑問は事実なのかどうかはわからないが,「相対評価」が続いているのは事実であり,会社の状況を丁寧に説明し,だから「相対評価」をとっているのです,と説明すべきだと思う.会社の利益率,今後の見込み,会社を取り巻く状況や今後の投資の必要性,その規模,そういう会社の状況を正しく提示した上で,人件費はここまでしか確保できません,と.それが正しかどうかいう議論はあっても,まっとうな議論の開始にはなるし,社員の今後の正しい行動を起こすために必要なことだと思う.これも2022年5月のコメントに書いたが,評価については,とにかく丁寧に行うことが求められる.それで両者が納得できるものではないが,ひとを大事にするならその評価も大事にするのは当然である.

丁寧な進め方ということで,会社は評価会議での決定(部下の評価レベル)を,部下に説明し(フィードバック),部下からは説明を受けたとシステム上に登録する決まりになった.しかし,実際は「相対評価」で決まったレベルを,「絶対評価」の看板を掲げたまま部下に説明するのは苦痛でしかなった.