inkcube.org代表のMemorandum

インクジェット,3D,その他テクノロジーについて.

中国製ヘッドと冗長ノズル

先週,色材協会のコンファレンス(IT講座)で連続噴射型インクジェットの話をした.そのコンファレンスの他の講演にSuzhou Realfast Print Technolog Co. Ltd.から中国製のサーマルインクジェットヘッドの紹介があった.この会社は中国でPIJやTIJのヘッドを開発しているらしいと以前から気になっていた会社で,「蘇州鋭発打印技術有限公司」という中国語の名前の方を知っていたが,この会社の英語名がSuzhou Realfast Print Technolog Co. Ltd.だった.

話をしてくれたのはCEOのYonglin Xieで,なんと1994年~2001年までXEROXでTIJの開発をしていたらしい.この時期は私も富士ゼロックスXEROXと一緒にTIJの研究・開発をしており,XEROXに何度か出張したが会った記憶がない.しかし彼の名前はどこかで聞いたことがある.彼はXEROXを辞めた後,TridentでPIJ,KodakでStreamの開発に携わったということなので,その時の論文か何かを読んだのであろう.

さて本題.この会社のヘッドはSUREjetという名前が付けられており,Speed/Uniformity/Reliabilityの頭文字をとったらしい.講演ではPIJではなくTIJのヘッドの話をしてくれたが,特徴は1色あたりに4つのノズルが走査方向に一直線に並んでいることである.つまり1回の走査で4つのノズルで分担して1列をプリントする,言い換えれば4つの冗長ノズルを持っていることになる.

この構成は4倍の周波数相当でプリントできることであり,また4分割プリントと同等に欠陥を見せにくくできる利点がある.この構成を実現したのはSUREjetが初めてではなく,Memjetの新しいヘッドでも採用されているし,チップ単位ではないがキヤノンのDreamLaboで複数ヘッドで実現されていたコンセプトでもある.

1パスプリントにおいてノズル欠陥で生じるいわゆる’スジ’を見えにくくする手法として,PIJは駆動波形でインク滴量を制御できる特徴を使い,欠陥ノズルに隣接するノズルからのインク滴サイズを変調して欠陥を見えにくくしている.一方,TIJはノズルの高密度化(ヘッドサイズ小),低コストという特徴を使って冗長ノズル構成で対応している.

最近のヘッド仕様としてインク循環に対応できるヘッドがトレンドであったが,今後,TIJに限定されるかもしれないが冗長ノズルを備えた構成がトレンドになるかもしれない.